マリオサンシャインを研究するブログ

マリオサンシャインのRTA,TASについて考察する。オタク向け

コロナマウンテンを更新した話

あらすじ

 先日、コロナマウンテンのTASを更新した。数回におよぶ更新を経て今までとは違うルートを作る事ができたので、その話をする。

動画はこちら。

https://twitter.com/zelpikukirby/status/1193116896234622978

 

過去のコロナはどうやって作ったか

 コロナマウンテンはフルゲームランでは最後に訪れるステージである。Any%を2度完走した私は当然Any%を作る際にこの区間でどういうアプローチが最適なのか調査していた。

 

 

 コロナを順を追って見ていくと、まず初手は放水で先の炎を消しつつ着地ダイブ復帰からスピンダイブ。目の前の棘床を超えて炎床に着地。

問題はその次の棘床がまだ引っ込んでいない事で、ここで考えられる選択肢は2つ。

1.棘が引っ込むまで待つ

2.初手と同様に棘床を飛び越す

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 1に関しては棘が引っ込むまでかなり時間がかかり、その間炎床で待つのは遅いと考えられた。そのため、2の棘床を飛び越えるアプローチを採用した。今思えば1を試さなかった事も調査が甘かったのだが、下記で述べる次の棘周期でどっちにしろ待つため大きな問題ではない。

 

 棘床を飛び越すには反転ダイブをするのだが、そのためには炎床でダイブ状態を解除しなければならない。崖に引っかけるのが一番早いのだが、1upのある足場までは意外と距離があり、崖引っかけの位置だとスピンダイブでも届かない。そのため、炎床でダイブ復帰→反転ダイブという動きにした。

 

 そこからは適当に進め、次の棘周期待ちにぶつかる。

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 青コインの手前にあるこの棘周期は超える事が出来ないため、ここも先ほど同様に周期を待つか、無視してホバーで超えるかの2択になる。

 ホバーで超えるのは実際試し、遅い事が分かった。というのも、コロナの棘床や炎床は小さすぎてダイブ復帰を出すと着地できずに落ちてしまう。それを防ぐために復帰中にスティックを引き減速させているのだが、そこからスピンを出しても速度がかなり死んでいるため、ホバーの時間が伸び遅くなってしまうわけである。

また、棘周期が今回は待ち時間がそこまでないため、待つ方が良いだろうと考えた。

 

 棘が引っ込むまで待つため、青コイン足場へのアプローチは比較的選びやすい。実用的なのは水滑りかスピンダイブの2つで、到着自体はスピンダイブの方が速い。しかし次の炎床へのアプローチまで広げて考えると、総合的に水滑りの方が速いという結果だった。(どの程度の差だったかは覚えていない)

 

 青コイン足場の次の炎床からのアプローチはほぼ1択で、スピンを出す事だった。炎床は水滑り出来ないため、水滑り慣性ホバーが使えない。この時代はまだRTAでコロナの速いルートが作られておらず、通常ダイブで慣性をつける発想もなかったため、落ちないよう減速させたダイブ復帰からのスピンになった。その後は流れで作るだけで特筆する事はない。

 

 まとめると、2014年の制作では以下の事がネックとなった。

・棘床の周期が越えられない事

・炎床では水滑りできない事

・棘床でダイブ復帰慣性スピンを出すのは無理がある事

 

この調査結果と、RTAの進化によって生まれた、炎床でのダイブからの慣性ホバーが2018年の制作で意識した事となっている。つまり2014年から新たに見つかった復帰慣性スピンでより速度を出す方法や、崖にダイブを引っかけて慣性スピンを出すといった新技術も含めた検証を見落としていた。これが大きな更新余地を生んだ最大の原因。

2018年で変わったのは初手の棘床飛び越えをせず、棘が引っ込むまで待つ方が速いと分かった事。 

 

調査結果への疑い

 特にコロナを作り直す動機が今までなかったのだが、ロケット保存の解説を作る過程でクッパ戦のムービー突入部を1F更新した事でコロナマウンテンを見直すきっかけが生まれた。

 

 まずは新技術の復帰慣性スピンを試した。2014年の時点ではただ着地から最速でスピンを出すだけだったが、2019年現在では復帰ショットガンで着地を調整する事で速度ロスを限界まで抑えたスピンが出せる。

ダイブ復帰から普通にスピンを出すと速度は大抵32前後なのだが、速度ロスを抑えると40以上残すことができる。これにより以前の調査では遅いと結論付けた青コイン足場から炎床への移動で復帰慣性スピンの方が速い事が分かった。

 しかしその差は4F。決して以前の調査が間違っていたというわけではなく、普通の復帰スピンでは水滑りより遅いのは確かで、それほど慣性スピンの速度ロスを抑える事が重要だった。

 

 次に炎床でダイブを崖に引っかけて慣性スピンを出す案を調べた。床の端で崖側へ入力→すぐに床側へとスティック入力をする関係で速度ロスはするものの、これだけで14Fほど早くなった。

 

 更に青コイン足場から水滑りをする必要がなくなったため、直前の棘床から水滑りで移動する必要もなくなった。こ棘床の水滑りをスピンダイブに変えると10F早くなるが、その先の周期を含めた調査まではしていないので、この10Fがそのまま先ほどの4F+14Fに加わるかどうかは不明。

 

アプローチの組み直し

 崖引っかけスピンが初っ端でも使えるのではと改めて考えたため、最初から作り直すことにした。しかし最初の炎床からの崖引っかけスピンでは、先の1up足場まで届かず、届く位置までダイブで滑ってから引っかけると今度は棘周期を待つ方に勝てないという有様で、ここに関しては2018年の調査と同じ結論となった。

 

 仕方がないので先の炎床で引っかけスピンを出し青コイン足場へ向かうアプローチを試した。ホバーの時間は長いが、周期待ちをしなくて良い分10F程度早く到達した。そのまま従来と同じく先の炎床へ向かっても良かったのだが、そうなると角度の関係で炎床から棘床の動線が悪くなる。そこで、2018年の時点で構想はあったが周期が間に合わず断念していた真ん中の棘床を経由するルートにチャレンジしてみた。

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 以前のアプローチでは青コインより左側に着地していたため、この棘床が遠かったのが周期に間に合わない原因だったが、今回は右側に着地しているため距離の余裕ができた。それでも画像の通り棘がすぐ出てくるため間に合わせるのは難儀であった。

 棘をギリギリスピンダイブで避け、先の炎床へ着地、即座に引っかけスピンで左の棘床というアプローチを組んだが、この棘床で微妙に周期待ちが発生する。こちらも棘が引っ込んだ直後に水滑りになるよう調整するのが難しい。この棘床で水滑り引っかけスピンを出し最後の炎床へ移る。最後はスピンダイブだと少し距離が足りないためスピン→ホバー→ダイブという動きになっている。

 

 以上の過程を経て最終的に泥船までで2018年と比べて28Fの短縮となった。

真ん中の棘床はホバ禁でも通らない空気な床だったが、今回の更新によって明確な存在意義が生まれた。また、RTAを最適化しただけと言える2018年のアプローチからTAS専用のアプローチに変わり、見た目も慣性スピンを多用する見栄えのいい動きになった。TAS制作者的にかなり満足度の高い更新ができたと感じている。

 

むすび

 技術が未熟な時代の調査を疑わずに制作をしたために、2018年の技術で十分作れたアプローチを見逃していた事態となった。2018年の調査の手抜きは長丁場のフルゲームランの最後で少し完成を急いでしまった事によるのは否めないと思う。アプローチの調査というのは違うルートを何回も作り直す必要があり労力が半端じゃないが、今回の件を教訓に昔の調査結果を過信しないよう心掛ける事を意識したいと考えている。