Any%RTAでTASアプローチをあとどれだけ採用できるか
あらすじ
マリオサンシャインのAny%TASはこれまで2010年、2014年、2018年の計3回作られ、少なからずRTAに影響を与えている。
TASのルートをRTAに取り入れる事はよく行われてきたが、割合的にはRTAルートをTASに取り入れている方が多い。TAS人口が少ないのもあり、アプローチの研究はRTA勢が行う事がほとんどとなっている。
プレイヤーの技量と世界記録が煮詰まるにつれて1秒の価値は重くなっていくが、新しいアプローチは生まれにくくなっている。既にアプローチ自体完成されており、これ以上改善できない場所が多いからだ。そうした状況からある種の最終手段であるTASのルートをRTAに取り入れる走者をよく見かけるようになった。
では2018年のAny%TASからRTAに取り入れられそうなアプローチはあるのかという事をTAS制作者の視点から述べていこうと思う。
既に取り入れられたもの
TAS制作時点ではRTAでは誰もやっていなかったが、TAS公開後に採用されたアプローチがある。
ビアンコ5の初手、ビアンコ4と同様に緑の地面の方を滑り、水滑り3段で風車を蹴りロープを捕まらずに行くルート。上手くいけば従来のロープに捕まるアプローチより1秒の短縮になるが、水滑り3段の速度維持や壁キックが難しいため採用してる人はかなり少ない。
ピンナS3の海賊船、船上の2枚を先に取った後、青コインのある金網籠の方へ行くルート。2秒~3秒の短縮になるのだが、これをRTAでやる人が出てくるとは思わなかった。
なぜかというと赤コイン3枚目を取って船を上手い事避けつつ金網籠へ向かうのがTASでも難しかったからだ(RTAより早いタイミングで来ている影響もある)。だが実際難しいのはここではなく、金網籠の赤コインを取って5枚目を取る部分、Y視点の角度合わせや金網についている角材が邪魔らしい。
マーレ4のウナギで6本抜きに加えムビカ用の歯をギリギリまで磨いておくほぼ7本抜き。Samura1man氏が通しでも成功させたが、他の走者は恐らく取り入れていない。6本抜きが間に合わないリスクが跳ね上がるのに対し短縮があまり期待できないからだろう。
マーレ7ニセマリオの瞬殺。3秒短縮だがこれもRTAでやっている人はほぼ見ない。
Any%の最後にあるため大抵は記録が出ない事が確定している走者がSoBを縮めたり、あるいはその3秒を稼げれば自己べが出そうという場合にやっている事がほとんどだと思う。普通にフレームパーフェクトの走者を要求されるため安定して成功するものではないだろう。
まだ取り入れられてないもの
本音を言うとどれもRTAには向かないと思っているため、採用が難しい要因を並べて各シャインごとにどれが該当するかまとめていく。
採用が難しい理由
1.速度維持
2.乱数
3.周期がシビア
4.操作が複雑、忙しい
5.角度、座標を合わせるのが難しい
6.タイミング調整が難しい
7.既存アプローチとあまり差がない
エアポート
ホバスラ復帰からY視点でどろパックンに攻撃-操作が忙しい
ホバスラ復帰せずに普通にY視点で遠くから狙う簡略化したアプローチは既に採用されている。
ドルピックタウン
どろパックン撃破後の死亡-タイミング合わせが難しい
死亡するタイミングをちゃんと合わせなければ短縮にならない
最大でも24Fしか変わらないため、他のところを詰める方が賢明
ビアンコヒルズ先回り-操作が忙しい、タイミング合わせが難しい
既に個別の解説記事で書いた通り
ビアンコヒルズ
S2の風車壁-速度維持、乱数、周期がシビア
丸太3段で速度ロスを抑える、アメンボの位置がよくないと周期に間に合わない
2014年版の左側を壁キックする方でも人間には厳しいだろう
S3アメンボ踏み-乱数
ここのアメンボは相当運が良くないと通り道に来てくれない。
近くにいたら利用する程度で良い。
S6内部の坂滑り-タイミング調整
坂滑りは大体この理由
S6はブロックがでかいためまだ成功させやすい方ではあるが50分近く走った通しでやるかどうかは別
リコハーバー
S1、S2の船の側面を水滑り-速度維持、乱数、座標合わせ
まず普通に行く方とタイムがほとんど変わらない。到底人間がやるものではない。
他のストーリーは細かいとこは違えど特筆すべきアプローチではないので割愛。
ピンナパーク
S6ヒミツ内部後半のルート変更-速度維持、操作が忙しい
120枚TASで使った氷ブロックとは反対の西側をY視点壁キックで登って行くルート
人間操作でのダイブ復帰慣性スピンがかなり速度ロスしてしまう上、Y視点壁キックもシビアで難しい
S7ニセマリオ瞬殺-タイミング調整
これも120枚TASで採用した方法、マーレ偽と同じ原理で空中から接近してニセマリオの始動を遅らせることでほぼ歩かせずに倒すやり方
ダイブを出すタイミングが難しく、手前の階段にぶつからない程度に勢いをつけるが、ニセマリオに気付かれないようにダイブを出すタイミングを少し遅らせるのがなかなか難しい。しかしワンシャインとかならまだ現実的ではあると思う。
シレナビーチ
S2のホテル内部、手前側を壁キックしてテレサ像の横から入口判定を踏む-座標調整が難しい、既存アプローチと差がない
ノンストップで判定に触れるのが見た目以上に難しい。練習すればできないこともないかもしれないが、普通に入るのとあまり差がない以上メリットが薄い。
マーレのいりえ
S1、S2のY視点を使う垂直上り-操作が複雑、角度合わせ
S1に関しては周期ゲーなのでわざわざこれをやる意味がない
S2は上り方自体よりも水車側から上って水滑りに繋げられるメリットの方が大きいが、Y視点がイカれた操作難易度にしているため厳しい。
S5の初手右へ行きロープ移動を短くする-タイミングがシビア
ロープヒップのタイミングが難しい
S6でS1と同じような上り方をする-既存アプローチと差がない
ホバ禁のように初手左へ行く既存ルートも難しめなのだが、TASのルートとの差は0.5秒もない。とはいえこのTASルートは人間にできる難易度で、ホバ禁ルートのようにロープ掴まりミスで海まで落ちる事故がないためリスクは少ない。
比較したら案外人力でもTASルートが速かったりしないのだろうか(筆者は未検証)
モンテのむら
S1キャンキャンのスピン掴みキャンセル
スピン入力によってキャンキャンの飛距離が落ちてしまう以外にデメリットはなく、人力でも簡単なのだがまだ採用されているところを見た事がない。その飛距離の減衰が結構響いてくるのが原因と思われる。
ちなみに同じく硬直キャンセルテクニックである鎖投げは採用している人もいる。
S5外部の金網上を通らないルート-速度維持
速度を一番残せる着地を出せないとキノコに直接乗るのは難しい
S5内部ノンストップ神おっさん-周期がシビア、乱数
最後のおっさんが1度も止まらなくても間に合うやつ。実質ここの運ゲーがなくなるためRTAで実現出来たら革命だが、TASでも相当ギリギリのため厳しいだろう。
会話中はおっさんの歩きが止まるのを利用し、子供モンテと真上投げモンテを踏まずに即話しかけるようにしなければまず間に合わない。
クッパ戦
復帰ロケットで足場を移動する-座標、角度、タイミング調整
崩れた足場にできた段差にダイブを引っかける、次の足場への角度調整、復帰ロケットの高さを稼げるようにロケットチャージのタイミング調整、全てが難しい
お湯の配置によっては復帰ロケットでもかわすのが困難なためこんなとこでTAS技を採用する人は出てこないだろう。
まとめ
人力で採用できそうなアプローチはまとめると以下のようになる
ビアンコS3のアメンボ:運よく通り道にいれば利用する
マーレS6の外部:既存のホバ禁式との比較次第
キャンキャンやワンワンのスピン掴みキャンセル
あくまでTAS制作者目線のため、これ以外のアプローチをRTAが取り入れる可能性がないとはいえない。ピンナ3が最たる例。
また、まだTASでも使っていない新アプローチが出てくる可能性も否定できない。事実ベイブレード坂滑りによってリコのS3、S4が変えられた。
フルゲームのRTAをするだけがマリオサンシャインではないため、ワンシャイン、ワンステージを詰めるためにアプローチを開拓するのも楽しみ方の1つ。
最近では120枚用の100枚コインのルートが何個か変わっていたりするため、まだまだ開拓の余地があると思う。是非とも多くの人に研究してもらいたい。