マリオサンシャインを研究するブログ

マリオサンシャインのRTA,TASについて考察する。オタク向け

【マリオサンシャイン TAS】風船割りについての話 その1

あらすじ

 ここ最近風船割りのTASを何回か更新した。

https://twitter.com/zelpikukirby/status/1106596098569699329 3/16

https://twitter.com/zelpikukirby/status/1107152564703760384 3/17

https://twitter.com/zelpikukirby/status/1107298686436962305 3/18

 

また、2014年と2017年にも風船割りの個別を作っている。

 

[TAS]Super Mario Sunshine Roller Coaster Balloons [1:08:10] - YouTube

https://twitter.com/zelpikukirby/status/817715673824538624/video/1

https://twitter.com/zelpikukirby/status/818043979325243392/video/1

 

 これらは全てルート(風船を割る順番)を変更する事によって更新したのだが、今回はここのTASを作る際にどうやってルートを構築・改善したのかについての話を書く。

 文量が多くなってしまうため、各個別のルート構築の様子を数パートに渡って書き、最後の記事にてルート構築のまとめ、今後の改善点を述べようと思う。

 

予備知識

 このシャインはジェットコースターに乗ってボトルロケットを撃つシューティングコースであり、普通のステージとは違う技術が要求される。そのため、どのようなテクニックが存在するか先に挙げておく。

 

ボトルロケットを放水で取得する

  ボトルロケットはマリオが触れる以外にもポンプの水を当てる事で取得する事ができる。これにより遠くのボトルを利用したり1つのボトルを再利用したりできる。

 ただし水の飛距離には限界があり、マリオから一定距離離れた水や撃ってから一定時間経った水は消えてしまう。通常放水の水は距離によって消え、ショットガンの場合は時間経過で消える事が多い。

 

位置保存撃ち

 ボトルロケットを取得して最速で撃つとそのボトルがあった場所から発射される現象(発射角度はマリオの向き依存)。

 上述の放水取得と組み合わせる事でかなりの範囲が射程に入る。1Fでも遅れればボトルがポンプにくっついてしまうためまずTAS専用。一応ボトルの復活位置バグを起こせば最速撃ちじゃなくても同じ現象が起こるが、風船割りでは使わないため割愛する。

 

2重カウント

 通常風船は1つ割ると1つとしてカウントされるが、全く同じフレームで2つのボトルを当てると2つ分としてカウントされる。これにより全ての風船を割らなくてもクリアする事ができるがやはりTAS専用。

 ちなみに19個割った状態で2重カウントを起こし21個にするとクリア条件である20個が達成できなくなり詰む。

 

上撃ち

 Rを1F軽押しにして次のフレームで深押しすると上向きにボトルが飛ぶ。マリオに上を向かせる必要がなくなるため方向転換の時間を短縮したり、普通では当てられない角度にある風船を割る事ができたりする。

 

軽押し撃ち

  ストレートショットとも呼ばれている。Rをしばらく軽押し続けてから撃つ事でボトルの軌道のブレを少なくする。

 

RTAで主に使うテクニックであり、これは上撃ちが起こらなくなるために真っ直ぐ飛ぶという原理である。メカクッパや風船割り1周クリアの安定感が大きく向上するためRTAプレイヤーは特に知っておきたい技である。

 またボトルの飛ぶ速さが上がるという効果もある。軽押しを全くせずに撃ったボトルの数F後に軽押し撃ちをしても追い越せる程に速さが違う。TAS的にはこの速度上昇をタイム短縮に用いる。

 

バージョン差

 このステージは日本の初期版とそれ以外(海外版含む)でバージョン差がある。

ボトル同士がぶつかった場合、初期版では双方とも消滅するが後期版では消滅しない。

この差によって修正版は2重カウントがやりやすくなっている(それでも人力で安定するようなものではないが)。

 私は初期版でTASを作っているため今回は初期版の仕様で話を書く。

 

 

 これらのテクニックを踏まえた上で読んでもらいたい。

 

きっかけ

 私がここの最初の個別を作ったきっかけは以下の動画である。

[TAS] Super Mario Sunshine Pinna 8 Roller Coaster Balloons - YouTube

Jinou TAS氏が制作したもので、これが一番最初に作られた風船割りのTASである。

これは道中のアプローチの作りは甘いが、風船割りパートに関しては人間離れしていると言える。当時はストレートショットもまだ発見されてなかったため、RTAとの差も十分大きかった。

 実際私も最初に見た時は、わざわざここのTASを作る必要はないなと感じた。だがメカクッパでボトルバグを調査している時に位置保存撃ちを発見し、風船割りにも応用してみようと作った次第である。

 

ルート構築

 私が風船割りTASを作る際、まずルート構築に苦戦した。最初はJinou TAS氏のルートを参考に位置保存撃ちをどこで使うのが有用か考え始めた。

 

最初に風船割りの時のボトルと風船の配置を確認する。

 

 

f:id:zelpiku:20190323201012p:plain

 

 これだと解説が難しいため風船とボトルにそれぞれ番号をつける

 

f:id:zelpiku:20190323223535p:plain


 

  ボトルE&Fは2つのボトルが重なって配置されている事を意味する。これは初期版だけの仕様(後期版では1つしかないため、2つ置いてしまった事に気付かなかったと思われる)で、これを水をかけずに取ると2つ同時に取得してしまうため、発射するとすぐに消滅してしまう現象が起こる。

 

 この図を基に風船割りを順を追って見ていく。

 

序盤:最初~Bボトルまで

 序盤は最初の上り坂パート、移動速度が遅いためRTAでもTASでもここでいかに風船を割るかが重要となる。

 

  マリオの初期位置は19番の風船の辺りである。つまり最初に取るボトルはAとなりこのAで割れる風船を考える。

 

f:id:zelpiku:20190324003202p:plain

 

 真っ先に候補となるのは1,2の風船。3,4と19,20の2枚抜きも候補となりうる。2014TASではこの3つから1,2の風船に絞ったわけだが、これはマリオの方向転換の時間を考えての事である。

 

 マリオはコースターの進行方向、つまりはAボトルと風船1,2の間辺りを最初に向いている。ここから3,4や19,20を狙おうとすると方向転換に時間がかかってしまうため、一番早く撃つことができる1,2を選んだわけである。

 

 Aボトル発射後は当然後ろのLボトルを水で取る。

 

f:id:zelpiku:20190324003817p:plain

 


 割れる風船の候補を考えると、普通に取ると3,4、19,20辺りになるがやはり方向転換の時間がネックとなる。なので位置保存撃ちをここで使うのが良いだろうと考えた。

 

 位置保存撃ちを考えた時、16,17の2枚抜きをするのがマリオの向き的にも一番良いと思った。

既にマリオは上り坂に入って斜めを向いているため11~13は当てることができず、8~10はDボトルで割るのがベストと考えていたため他に有効な選択肢もあまり多くない。

 

 また、16~18は3枚抜きができず、位置保存撃ちを使わなければ2枚抜き自体もできないくらい厄介な配置なため序盤で優先的に割るべきと考えられる。そのため、復活したAボトルで残った1つを割る事にした。

 

 さて、動画を見れば分かるがAボトルが復活する前にLボトルが復活している。これはボトルがステージの端にぶつかるまでの時間の違いによるものである。

 ステージの端がどこにあるかは詳しくは分からないのだが、図の左側に向けて撃ったボトルはすぐに壁にぶつかる事が多い。

 

 Lボトル2発目で何を狙うかだが、18は高い位置にあり割る事ができないため、他の風船を狙う事にした。この辺りの時間になると19,20も位置保存撃ちをしなければ2枚抜きしづらくなっていたためここを選んだ。

 

f:id:zelpiku:20190324005340p:plain

Lボトル2発目のタイミングで19,20を見た時の図

 その後Bボトルで3,4を割る。この2枚も前半で割らなければ狙うのが難しいためである。

 

 中盤:Cボトル~Dボトルまで

 中盤はレールを下り1回転レールの途中までである。急降下で速度がつくため時間が短くわざわざパート分けする必要もないのだが、作り直す度に地味に改善が進むパートでもあるため分けている。

 

 Cボトルは5~7の3枚抜きをするのが定石である。この3枚は基本このタイミングでなければ割るのが難しいからである。

 

 これは位置保存撃ちを発見して最初に思いついた利用方法だが、Cボトルで8を割りレールにぶつけるとボトルがすぐに割れ復活が早くなる。

 そのため、後ろを振り返って放水すれば復活したCボトルを再利用できる。

レールの判定が狭いため8、9の2枚抜きなどはできないのだが、8~10は3枚抜きしづらいため両端のどちらかを割っておくだけでも利点は大きい。

 

 復活したCボトルで5~7を割りDボトルまでは特にする事がなくなる。

メカクッパではDボトルの前に放水でEボトルを取得しているのだが、風船は水を遮ってしまうため9,10がある時はEボトルは取得できない。

 

 Dボトルを普通に取り角度が合うのを待ち9,10と12,13の4枚抜きをする。

実は11も含めた5枚抜きが可能なのだがこの時点では知らなかった。詳細はパート2の記事にて書こうと思う。

 

終盤:E,Fボトル

 最初に述べたとおりここはバージョン差がある。EとFのボトルが2つ重なっており、水を当てるとEボトルだけが取れ、元あった場所にはFボトルが残った状態になる。

初期版ではこれを利用して実質ボトル量が2倍になるため有利となる。

 

 Dボトルで邪魔な9,10を割ったので水でEボトルを取得。この時点で残っている風船は11、14、15である。14,15はJボトル付近でなければ同時割りできないため、この3つを割るにはボトルが3発必要になる。

 

 Eボトルを位置保存撃ちした場合、Fボトルとすぐにぶつかってしまうため、Fボトルがあるうちは位置保存撃ちする事ができない。

 そこでEボトルを通常撃ちで11にぶつけその間にFボトルを14、15の片方に当てる。当然Eボトルはすぐに壁にぶつかるため復活したものを再利用し最後の風船を割るという具合である。

 

 

 以上が私が最初に作った風船割りの制作過程である。

この時にはまだ上撃ちや軽押しによる速度上昇、2重カウントを発見していなかったため、狙える風船の範囲などが現在よりも狭い状態での試行である事に注意してほしい。

 

 最後の14,15が遠い位置にあるため、この風船を割るタイミングを改善できればという考えは作り終わった時からあったが、そうなると風船割りを全て見直さなければならない。

 当時の私にはそれほどのモチベーションが残っていなかったため、風船割りの更新にかなりの間が空いてしまった。

 

むすび

 今回は2014年に作った風船割りTASについて書いた。

 

次回はこのTASを改善するきっかけと大幅なルートの見直し過程の話をする。

1フレーム技使用前提の組み方をしているためRTAの参考にはならないかもしれないが、TAS制作の話に興味を持ってもらえたら嬉しい。